製造業者のノウハウ・知的財産権が「召し上げ」られる?―契約交渉と契約書作成が企業防衛のカギ―
- Agree!担当者
- 10月7日
- 読了時間: 4分
更新日:10月26日
公取委も問題視する「ノウハウ・知財の吸い上げ」
近年、製造業をはじめとする企業活動において、自社のノウハウや知的財産の保護は極めて重要なテーマです。そのような中、公正取引委員会は、優越的な地位にある取引先が製造業者からノウハウや知的財産権を不当に吸い上げているとの指摘を受け、「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査」(令和元年6月公表)を実施しました。
実際に報告された「典型的な不当行為」の例
片務的な秘密保持契約:相手方の秘密は厳守する一方、自社の秘密は守られない契約を締結させられる(業務用機械器具製造業)
ノウハウの開示強要:営業秘密であるレシピを「商品カルテ」に記載させられ、模倣品を製造されたうえに取引停止(食料品製造業)
技術指導の強要:競合他社の工員に対し、自社の熟練工が無償で技術指導を実施させられる(生産用機械器具製造業)
名ばかりの共同研究契約:実質的には自社のみが研究開発を行っているのに、成果は相手企業に無償帰属(ゴム製品製造業)
知財の無償譲渡・ライセンス:一方的に自社の知的財産権を無償譲渡・ライセンスさせられる(石油・石炭製品製造業)
「雛形だから」「皆こうしている」は危険なサイン
「これがうちの雛形です」「他社もこの契約でやっています」と言われ、納得してしまうケースも少なくありません。しかしその「雛形」は、実は自社にとって極めて不利な内容であることがあります。
公取委の報告書でも、
「製造業者が研究開発等の末に獲得したノウハウや知的財産権は当該製造業者の競争力の源泉であり、これが不当に開示・譲渡させられると、日本の企業の知財戦略そのものが成り立たなくなるおそれがある」
と強く警鐘を鳴らしています。

開示後では「取り返しがつかない」
たとえ独占禁止法上の違反として行政が是正に動いたとしても、一度開示してしまったノウハウは取り返しがつきません。営業秘密は一度外部に漏れれば“秘密”ではなくなり、訴訟や行政救済があっても実質的なダメージを防ぐことは困難です。
企業防衛の第一歩は「契約交渉」と「条項設計」
自社の知財を守るには、取引段階での契約交渉と契約書設計が不可欠です。取引先とのバーゲニングパワーに差があったとしても、法的根拠を踏まえた論理的交渉によって契約内容を改善できる場合は少なくありません。
筆者自身も、大企業およびスタートアップ双方の法務部に勤務した経験があり、交渉のアプローチ次第で結果が大きく変わることを何度も実感しています。
専門家による契約レビューのすすめ
社内に契約・知財法務の専門部署がない場合は、外部の法律事務所(特に知的財産契約の専門家)に依頼することを強くおすすめします。秘密保持契約(NDA)や共同開発契約、ライセンス契約、OEM契約などは、わずかな文言の違いで企業の命運を左右することもあります。
まとめ:自社の「知財」を、契約で守る
製造業におけるノウハウや知的財産は、企業の成長と存続の「核」です。相手の提示する契約を鵜呑みにせず、自社の知財を守れるかを確認することが何より大切です。取引の前に契約書を専門家にチェックしてもらうことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
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