コンサル業務の成果物(レポート)の著作権は、委託者に帰属させるべきか?
- Agree!担当者
- 4月18日
- 読了時間: 4分
更新日:5月6日
コンサルティング業務において、最終的な成果物として納品されるレポートや提案書。その著作権を委託者と受託者のどちらに帰属させるべきかは、契約実務上しばしば争点となります。
委託者サイド☞ お金を払っている以上、当然その成果物の権利は確保したい!
受託者サイド☞ 報酬を貰う以上強く言えないが、今後の業務に支障が出るのは避けたい!
・・という両者の利害が衝突ずる場面です。
本稿では、著作権を委託者に帰属させることことに許容性がある(のではないか)という立場で、その理由と実務的な対応案を解説します。

1. 委託者が著作権を求める主な理由:成果物利用の自由を確保したい
コンサルレポートは、委託者の経営判断や事業戦略に直結する資料です。そのため、委託者としては、レポートを社内で自由に複製・配布・加工・再利用することが必要不可欠です。
たとえば、
社内プレゼンや取締役会資料として転用したい
他部署での活用を前提に体裁を変えたい
外部の協力会社へ一部内容を共有したい
といった場面で、受託者側の著作権が障害となれば、委託者にとって大きな業務制約になります。このような実務ニーズに応えるためには、委託者が著作権者となっておくことが望ましいといえます。
2. 著作権が委託者帰属でも、受託者に大きな不利益はない
「著作権を受託者から取り上げる形になるのでは?」といった懸念もあるかもしれません。しかし、以下の(1)~(3)の理由により、著作権を委託者に帰属させても、受託者に実質的な不利益はほとんど生じないとも考えられます。
(1) レポートには委託者の営業秘密が含まれることが多く、再利用がそもそも困難
多くのコンサルレポートには、委託者の経営戦略、財務データ、内部情報などが含まれており、そもそも受託者がこれをそのまま第三者に提供・再利用すること自体が現実的に困難です。秘密保持義務との整合性からも、実質的に他で使うことはできません。
(2) たとえ類似レポートが他社に納品されたとしても、それ自体は著作権侵害には当たらない
著作権は「表現」を保護するものであり、同じような結論や構成を用いたからといって直ちに侵害とはなりません。また、著作権を譲渡したレポートを複製するのではなく、一から記載をすれば結果として類似のレポートが出来上がったとしてもそれは前のレポートに「依拠」したものではありませんから著作権の侵害とはなりません。
いずれにせよ、受託者が他のクライアント向けにレポートを作成する際に、過去の経験を活かすことまで妨げられるわけではないのです。
(3) そもそも一般的・定型的な部分には著作権が成立しないことも多い
例えば、統計のまとめ方、凡庸なレイアウト、業界の一般論など、創作性が乏しい部分は著作物として保護されません。こうした要素の多いコンサルレポートでは、そもそも著作権を強く主張する法的根拠も薄いのが実情です。
3. 結論:委託者に著作権を帰属させることは許容できる
以上を踏まえると、コンサルレポートに関する著作権を委託者に帰属させることは、
実務上の利便性を確保し、
受託者の実質的不利益も回避できる
という意味で、合理的かつ現実的な契約実務と言えるのではないでしょうか。
4. どうしても受託者側が帰属を譲れない場合の対応
それでもなお、受託者側が自社のノウハウ保護等の観点から著作権の帰属を譲れない場合は、著作権は受託者に残しつつ、委託者に対し社内利用を含む広範な使用許諾を与える契約スキームも考えられます。
たとえば以下のような条項が有効です:
「本レポートの著作権は受託者に帰属するが、委託者は、社内利用目的で、追加の費用を要せずに本レポートの複製及び翻案を期間の定めなくできるものとする。」
このような構成をとることで、法的整理としては受託者の面子を立てつつ、委託者の実務上の自由も担保されます。
5.まとめ
上記はあくまで一般的な「コンサル業務」における自前の「レポート」に関する「著作権」帰属に関する考察です。他の業務や、別の成果物(ソフトウェアなど)、それから業務の履行過程における発明など産業財産権の対象にも妥当するものではありません。
やはり契約書に関しては、知財契約の専門家に相談することをお勧めします。
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