生成AIで契約書を作成すれば法務は不要?
- Agree!担当者
- 5月13日
- 読了時間: 3分
近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの進化により、「契約書の作成もAIで十分ではないか?」という声が現場でも聞かれるようになりました。
確かに生成AIは、NDA(秘密保持契約)などの定型的な契約のドラフト作成や、英文契約の翻訳、条項の比較など、法務業務の一部を効率化する有力なツールです。
しかし、「生成AIさえあれば法務は不要」と考えるのは極めて危険な誤解です。以下にその理由を具体的に説明します。

1. 適切なプロンプトが入力できなければ、的外れな契約書が生成される
生成AIは入力された指示(プロンプト)に基づいて契約書を作成しますが、そもそも契約の本質を正しく把握していなければ、適切なプロンプトを入力することすらできません。
たとえば、
「これは知的財産権の利用許諾契約に該当する」
「これは実質的に売買契約と請負契約が混在した契約構造である」
「本件では肖像権に関する同意が必要だ」
「本件には個人情報の取り扱いに関する条項が求められる」
といった法的構造の理解がなければ、AIに「それっぽく見えるが意味のない契約書」の作成を依頼してしまうことになりかねません。AIは“何を作るべきか”までは判断してくれないのです。
2. 相手との関係やビジネス全体を考慮した統合的判断ができない
生成AIはインターネット上の情報や学習データをもとに、一般的な契約条項を出力することはできます。しかし、その出力内容はあくまで「標準的」「平均的」な条項であり、ビジネスの実態に即した個別最適化には対応できません。
契約書のドラフト作成には、契約の目的・取引スキーム・相手方との交渉力バランスなどを考慮した法的判断が不可欠です。相手方との力関係や業務スキーム、交渉戦略を踏まえて、条項の全体的な調整を行うことが求められます。
このような全体最適化・リスクコントロールは、専門的な知見と経験に基づく統合的な判断が求められるため、AIでは代替できません。
3. AIの誤りを見抜く専門家によるチェックが不可欠
生成AIの出力は、非常に自然で整った文章として見えることがありますが、法的観点から見ると致命的な誤りが含まれている場合があります。
実際、先日ある契約書のレビューをAIに試験的に依頼したところ、最も重要な「責任制限条項」について、契約の趣旨と真逆の内容で解説しているケースがありました。このような誤りは、条項の内容を鵜呑みにしてしまうと企業に重大な法的リスクをもたらしかねません。
つまり、生成AIの活用を前提とする場合でも、出力された契約書の内容を正しく理解し、必要に応じて修正・補完できる専門家のチェックが不可欠なのです。
4.まとめ:生成AIは「法務の代替」ではなく「法務の補助」
結論として、生成AIは契約業務を効率化するための補助的ツールとして有用であることは間違いありません。しかし、それはあくまでも「法務の判断と責任のもとに使われるべきツール」であって、法務自体を不要にするものではないのです。
むしろ、AIの出力を正確に評価し、リスクを見極め、契約全体の整合性を担保できる法務担当者・外部専門家の存在は、これまで以上に重要性を増していくと言えるでしょう。
契約業務にお悩みがあれば、数多くの契約書の作成・レビュー経験を持つ「Agree!」の弁護士・弁理士に是非ご相談ください!
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