日本語の契約書の英訳=英文契約書?
- Agree!担当者
- 4月11日
- 読了時間: 3分
更新日:4月14日
「海外のお客様と初取引だ!でも契約書の雛形は日本語のものしかない・・そうだ、DeepLやChatGPTなどを使って日本語の雛形を英訳してもらい、それを使えばいいんじゃない?英文契約作成を外注すると高くなりそうだし・・」
海外からの初受注の際、このように悩む方は多いのではないでしょうか。
でもご用心!
国際取引において、日本語の契約書をそのまま英訳して使用することは、しばしば大きなリスクを伴います。言語の壁を越えた「翻訳」ではカバーできない、法制度や契約慣行の違いが背景にあるためです。ここでは、和文契約書を単に英訳しただけでは不十分である主な理由を3点取り上げます。

1. 日本企業間では当然とされる前提が、英文契約書では記載されないと致命的な不備になる
日本の企業間で締結される契約書には、あえて明示されていない事項が少なくありません。たとえば、準拠法(契約に適用される法律)について、「当然、日本法でしょ」という黙示の了解が存在し、契約書にはその旨の記載がないケースが多くあります。
しかし、このような和文契約書をそのまま英訳して海外の取引先に提示した場合、準拠法が記載されていないことが大きな問題になります。国際取引では準拠法の明示は極めて重要であり、これを明記しなければ契約の解釈に重大な不確実性が生じ、紛争発生時に深刻な混乱を招くことになります。
2. 準拠法によって有効・無効や必要な条項が異なる
国際契約では、準拠法を日本法とするとは限りません。交渉の結果、相手国の法(たとえばニューヨーク州法やイングランド法など)が準拠法として採用されることも珍しくありません。
このような場合、日本法下では有効で問題ない条項が、外国法下では無効または無意味となるリスクがあります。たとえば、代理店契約の解約条項は、日本法では比較的柔軟に扱われますが、ヨーロッパの法制下では代理店保護の観点から効果が制限される可能性があります。また、例えば違約金の規定もコモンロー下では必ず有効というわけではありません。
また、逆に英米法では商慣行上「当然に」含まれるべきとされている事項(例えばconsideration条項やentire agreement条項など)が、日本法ベースの和文契約書には記載されておらず、そのまま翻訳すると不備のある契約書と評価されることになります。
3. 国際標準から逸脱した日本的表現が誤解や交渉拒否を招く
和文契約書には、日本的な価値観や文化が色濃く反映された条項が多く見られます。たとえば、「両当事者は誠実に協議の上解決を図る」などの協議条項は、日本企業間では一般的ですが、国際的な契約書においては曖昧かつ拘束力に欠けるものとみなされる傾向があります。
このような条項をそのまま翻訳すると、相手方にとっては「紛争が起きたときに、どう対応すればよいのかが不明確な契約」となり、実務上も交渉上も信頼を損なう結果になりかねません。国際取引においては、具体的な解決手段(仲裁、管轄裁判所の指定など)を明示することが求められます。
おわりに:「翻訳」ではなく「英文契約書の作成」が必要!
以上のとおり、和文契約書をそのまま英訳するだけでは、適切な英文契約書とはなり得ません。単なる言語の翻訳ではなく、相手国の法制度、契約慣行、交渉文化を踏まえた「英文契約書の作成」が求められます。
国際契約書の作成にあたっては、専門的なリーガルチェックを伴うドラフティングが不可欠であり、単なる「翻訳」に頼ることなく、真に実効性のある契約書の整備を意識することが重要です。そして、国際契約書の必要があれば、数多くの国際契約書の作成・レビューを行ってきた「Agree!」の弁護士・弁理士に是非ご相談ください!
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